3/15WeverseLive:ゴールデンクローゼットの外で(ジョングク)

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 元々洋楽畑でアングラ好きだった私が、BTSを好きになったのは2019年の中頃で「ばんたん ちょうみじ?」どころか、K-POPを好きになるのも、アイドルを推すのも初めてだったから分らないことが多かった。Twitterで流れてくる動画の本編がどこで見られるのかも分からず、Youtubeで見た切り貼り動画のウソや誤訳にもまんまと騙され、新大久保で売っていたBTSグッズは公式だと信じて疑わなかった。適当にぽちったアメハスは円盤印刷が異様に荒かったのにそれが海賊版だと気づいたのは一か月後だ。日本で堂々とコピー品を売るのはアメ横のブランドコピーだけと思っていた無垢な私は、おまけで付いてきた薄いフォトカも大事に大事にファイルにしまった。今まで熱心に何かを集めたこともなかったから、偽物だとしても入手した一つ一つが私にとっては宝物になっていた。

 

 それから徐々に本物と偽物の違いが分かるようになり、情報を集めるにも慎重になった。字幕が微妙に違うVラとウィバスの両方見たり、Twitterで翻訳してくれる方のツイートは何人かの翻訳を照らし合わせて読んだ。オタク気質なところがあるので必要なところはメモを取って一部は文字起こしをして、花様年華はMVや小説と照らし合わせ元ネタも辿りながら一人で楽しんだ。はまりたての情熱と目の前の大量のコンテンツに胸を弾ませ、分からないなりにその頃は楽しんでいたと思う。

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 でも私が偽物を掴まされたり、信憑性の高い情報を精査している間、ジョングクはちょっとおかしかった。そのころバンタンは初めての長期休暇中で、その間に露見したタトゥーリストとの熱愛や突然の長髪姿、綺麗だった手の甲にはタトゥーを入れARMYを騒がせた。前々からファンだった人はずっとマッシュだったジョングクに驚いていたし、似合うと褒める人がいる反面、とてつもなく怒ってる人もいた。タトゥーに関してもへナだとか本物だとか、編集で消されたりテープや手袋で隠していたりしたのでしばらくは本当に入れたのか議論になった。私は少し前に見たアメハスでジョングクは「大人になったらタトゥーを入れたい」と言っていたから、タトゥーを入れたことにもあまり違和感はなかった。

 でもそれはずっと追ってきた古参の人との思い入れと、私がコンテンツを消費したタイミングに大きくズレがあったからだ。私のバンタン歴が四年目になった今、ユンギが目に付く手の甲にタトゥーを入れて現れたら少し混乱する。いやいやそういうのはシュガさんのイメージじゃないでしょ、ぐらいはきっと思う。長髪もタトゥーも女性に関してだってジョングクは何一つ悪くはないけど、全てをワンセットで喰らってしまったあの当時のグクペンさんの憤りは今なら少し分かる気がする。

 

 「いい子」で「赤ちゃん」だったジョングクが初めてARMYを騒がせた後も彼は止らなかった。車で接触事故を起こしたり、コロナ化でソーシャルディスタンスが強く呼びかけられる中で梨泰院の飲食店を訪問して度々燃えた。長期休暇があった2019年8月から2020年4月頃までグクペンさんの期待と想像とイメージを裏切り続け「ヒョンラはなぜ彼に怒らないのか」と飛び火までしかけた。歴浅の私はジョングクが悪い子なのかよく分からなかった。過度な擁護は大嫌いだけど、ジョングクが大暴走する裏でテテの様子があからさまにおかしくなっていたり(バーンアウトしてた)宿舎の共同生活が終わったり、コロナがあったり、ツアーのことも兵役問題もあったりしたから、そういったゴタゴタが彼の心に(無自覚にでも)影響を及ぼしているだけで、ジョングクが不良になったとか、調子に乗ってやらかしました、みたいな感じではないと思ってた。だって私が見た膨大なコンテンツや大量のメモを読み返しても、ジョングクが遊びまくってオラオラしてる姿はどう考えても想像しづらかった。

 

 梨泰院事件の二ヶ月後、FESTAの一環でジョングクは自作曲”Still With You"をサンクラで発表した。早々にペン卒してしまったARMYに届いたかどうかは分らないけど、その歌詞にはぎゅっと胸が締め付けられた。

soundcloud.com

僕をかすめる君の淡いその声
僕の名前を一度だけ もっと呼んでください
凍ってしまった夕焼けの下で止まってしまっているけど
君に向かって一歩ずつ歩いていくよ

Still with you

 

暗い部屋で照明も1つもなく
慣れてはいけないのに
それにまた慣れる
低めに聞こえてくる
このエアコンの音
これでもないと
僕は本当に崩れてしまいそうだ

 

一緒に笑って 一緒に泣いて
この単純な感情が
僕のすべてだったみたい
いつだろうか
また君に向き合ったら
目を見て言葉にするよ
「会いたかった」


恍惚とした記憶の中で
僕一人でダンスを踊っても雨が降るでしょう
この霧が晴れるころ
濡れた足で走っていくよ
その時は僕を抱きしめて

 

あの月が寂しそうに見えて
夜の空に明るく泣いているようで
いつか朝が来ると分かっていながら
星のように君の空にとどまっていたかった
一日をその瞬間を
こんな風になると分かっていたら
もっと気持ちを込めていたのに


いつだっただろうか
また君に向き合ったら
目を見て言葉にするよ
「会いたかった」

 

恍惚とした記憶の中で
僕一人でダンスを踊っても雨が降るでしょう
この霧が晴れるころ
濡れた足で走っていくよ
その時は僕をつかまえて

 

僕を見つめるかすかな笑顔の裏に
美しい紫の光を描いてみるよ
お互いの歩みが合わないかもしれないけど
君と一緒にこの道を歩きたいんだ

 ”Still with You”はジョングク初めての自作曲。ARMYに向けた気持ちと今現在の心情がストレートに伝わってきて、ワルツが無期限延期になった頃だったから、その気持ちが歌詞にはあるのだろうけど、心が離れていったARMYに対しての歌でもあるのかなと勝手に思ってしまった。そしてこの曲だけに留まらず、翌日シュプDのラジオに出て自分の言葉で気持ちを吐露し最近のごたごたを直接謝罪した。その時ユンギは言っていた「ジョングクはいい子です」と。

 

 そうだ、ジョングクはいい子だ。

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 真正面から見ても性格悪く斜めから見ても、今まで見てきたコンテンツの情報をかき集めても、どんなにおかしなことをしても、思慮の浅さと若さの経験不足で間違えることがあってもジョングクはいい子だ。そして「どんな瞬間も深く考えて行動するジョングクになります」の言葉通りジョングクはここまで大きくARMYを騒がせることは(私の知る限り)なくなった。嵐が過ぎ去った後の晴天のようにカラッとしたジョングクが楽しそうに歌ったり踊ったり、嬉しそうにヒョンたちをからかったり、たまに眠くなって口数少なくなったり、疲れてる時はヒョンたち(主にシュチム)に命令口調になったり(結構すき)ウィバスの投稿が皆無なのも含めて以前のジョングクさんになった。この頃からメンバー全員参加のBEのセルフプロデュースが始まって制作過程も流れていたからタイミング的にもよかったと思う。お仕事している時のジョングクはとてつもなく健全だ。

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 あの時『ヒョンラは何故怒らないのか』と言っていた人もいたけど、ヒョンたちは怒るよりも見守って支えていたのだと思う。撮影時期がズレてるからあくまで憶測でしかないけど、その時期のRUN BTSでジミンさんと同車で帰るような発言が多々あったから、ジョングクの面倒を見るのが大好きなジミンさんとしばらく一緒に暮らしていたのかもしれない。チームは家族に似た関係性に近いけど、誤まったことをしてしまったら叱るのではなく、周囲から批判がくれば良いことでも悪いことでもまず真っ先に本人を守るような気がする。閉鎖的といってしまえばそれまでだけど、バンタンの絆の強さは分りやすいものではなく、時にはARMYさえも入れなさそうな強固さを感じる(それを感じた時はちょっと寂しい)

 

 その出来事以来、ジョングクに対して絶対的な信頼感もあって、違和感を覚えたことは長くなかった。でも2022年FESTAで公開されたジョングクの自作曲”MY YOU”の歌詞が久しぶりに何か心にひっかかった。

www.youtube.com

消えるのか

もしかして夢だろうか

寝返りを打って

また眠る

永遠にいられるの?

身に滲みるこの気持ち

なだめてみて

夜に閉ざされる

 

 全体的に歌詞は明るいのにこの一部分だけ何かを落とし込んだように暗かった。ジョングクも「全てのことが夢で消えてしまったらということを考えていて、それを土台にして曲を作ると憂鬱な感じになってしまうので綺麗な単語で埋めた」と話していたので、土台部分がこの歌詞の一部に顕著に露出しただけかもしれない。と、うっすら考えつつも、この時期は4月に単独Vラをした「BTSはただの男の子7人じゃない/2022年のBTSはとても複雑で精巧になってきてます」と発言したナムさんの方が気がかりだった。そして直後の会食で全てのことが吹っ飛んだ。

 会食で入隊のことをきちんと話してくれたら変な誤解も生まれなかったのに釜山や株価のせいでお(略)2022年の私の個人的運営に対してのイライラは置いといて、会食で完全に燃え尽き、灰になると同時にジョングクの歌詞の違和感も忘れてしまった。

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 それからしばらく追いつつもメモをとる熱量もなく、ただ放出されるコンテンツを合間合間に消費していた。ジョングクがキャンプに行くVlogは何だか寂しそうに見えたけどスタッフがいるとはいえ、一人でキャンプの絵だから寂しそうに映って見えるだけだろうと思った。何かのコンテンツで「メンタルケアを受けてる」とジョングクは度々言っていた。アイドルは定期的にメンタルケアを受けているけど、それをわざわざ口に出すっていうことは本格的にということかな?と思いつつもスルーした。IGを消した時も熱しやすくて冷めやすい、そしてSNSを放置しがちなジョングクらしかったから深く考えなかった。

 

 回数が増えていった飲酒ライブも横目で見ていた。練習生時代の頃によく聴いていたというWeezyの”Granede”や、月末評価で使ったジャスティンティンバーレイクの”Seomorita”をかけ懐かしそうにふにゃっと緩める目はいつものジョングクだ。でもいつものようにスルーできなかったのはホビの”On The Street"を見ていたジョングクの横顔だった。画面を眺めるジョングクは唇の皮をちょんちょんと向き、唇を食み小指の爪を噛みながら、集中しているというより放心してるように感じた。曲が終わると「会ったからからかおう」といつもの様にちょけつつも、無表情に何度か頷いて「歌詞をちゃんと見なきゃ」ともう一度再生した。

 昔ジョングクは「歌詞をよく読みます」と言っていた。曲の理解を深める為に歌詞を読むことは大事と、様々なメンターさんが言っていたから、ジョングクも練習生時代の頃から沁みついている癖なのだろう。だけど曲が終わった後に、メロディーをなぞるように口笛だけを吹いて「暖房を切ったのになんでこんなに暑いんだろう」と呟き、感想は言わなかった。ホビの曲を聴いてジョングクが何を思ったのかは分からなかった。

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 配信の終わりの方では、明け方の居酒屋の始発30分前みたいな気だるいテンションを醸しながら「なんで応援してくれるんですか。なんで応援してくれるんだろう。僕たちのこと」と呟いた。酔いと眠気でグダグダになっていくジョングクにARMYが「寝て」とコメントして、それを読んだジョングクは「今日はなんだか寝たくない。だから僕に寝てって言わないでください」と言って横になりいびきをかいて寝た。下世話だけど酒を飲んだら元カノに連絡するタイプ、とうっすら思ってしまった。

 

 アメハスで「タトゥーをいれたい」と言ったジョングクはユンギに「そんなこと言ったらARMYが悲しむよ」と咎められる。でもジョングクは「愛してるって言ったら多めにみてくれますよ」とあっけらかんと言う。デビュー当時のジョングクのスタート地点は「愛されて当たり前」だった。そして様々な経験を経て今はなんで応援してくれるのか、愛されるのか分からなくなっている。その理由の全ては分からないけど、2019年の空港で「髪を切れ!」と怒鳴った本国ARMYがいた。その声が届いたのかは分からないけれどジョングクはその後髪を切り、また伸ばすのは数年後になる。あの休暇でジョングクは自分のやりたいことをした。おそらく長髪もタトゥーも事務所に相談しただろうしHYBEもそこまで厳しい会社ではないから許可は得ていたのだと思う。だけどそれは否定され個人の幸せとARMYの幸せは結びつかなかった。ジョングクは誰よりも激重にARMYもバンタンも大事にしてる。ARMYを大事にすることとチームを大事にすることは同列だ。ARMYがいなければチームはなく、チームがいなければARMYもいない。だけど「チームが幸せでも個人が幸せでないと意味がない」とパンPDは言い続けているし、ナムさんも時折この言葉を口にして、ジョングクもおそらく個人の幸せについて考えているのだろう。髪は以前のように戻した。だけどタトゥーは増え続けた。自分だけの幸せだけを重要視していない(できない)ジョングクはARMYに許されるラインをずっと探してる。ジョングクの疑問は「なんで応援してくれるんですか?」ではなく「どうしたら応援してくれますか?長く愛してくれますか?」とARMYに問いかけ、長く模索しているように感じた。

 

 私はメンバーの誰でも様子がおかしいとすぐに気にしてしまう。でも過度な心配はただの迷惑だ。それでも気持ちが溢れきってTwitterに書かかずとも、グーグル先生の検索の引っ掛かりにくいはてなへ書きなぐってしまう(そして消す)事務所の許可を得ずに始まった飲酒LIVEは、自分のやりたい時に好きな場所で、好きな時間に好きなように配信したかったのだろう。どんな姿を見せてもこの配信はジョングクのやりたいことで、だから妙な心配も詮索もせずにただ見守っているのが正解なのに。

 テテがバーンアウトした頃にメンバーがよく言っていた言葉がある。それは「お前のやりたいようにやれ」だ。このヒョンラの言葉を借りるなら、歌っても飲酒しても放心しても泣いてもいびきをかいて何もかも曝け出しても、ジョングク、すべて許すからやりたいようにやって。君がどんなにおかしくなっても、イメージ通りじゃないことをしても今度こそは間違えず、君個人を幸せにするために、自由にするために愛していくよ。バンタンが消滅してARMYがこの世から一人もいなくなっても人生は続いていく。その全てを応援するよ。

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(この散文はユンギペンからみたジョングクです。細かい部分の見方や記憶違いもあるかもしれませんが多めに見てくれると幸いです)(サランヘ)

 

以下から画像をお借りしました。

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